6.17.2013

[film] Before Midnight (2013)

※ほんとうにこの3作目を楽しみにしているひとは読まないほうがいいかもしれません。

9日の日曜日、Whitneyで"Hopper Drawing"を見たあと、地下鉄で下に降りてAngelikaで見ました。 ここだと公開直後なので複数の部屋で30分おきくらいに上映しているの。

"Before Sunrise" (1995) ~ "Before Sunset" (2004)に続くRichard Linklater - Jesse (Ethan Hawke) & Celine (Julie Delpy)のトリオによる"Before"モノ3作目。

2004年の"Before Sunset"公開時、MOMAでRichard LinklaterとEthan Hawkeのトークがあって、そこで3作目について質問が出たときは、やりたくなったらやるかもねー、程度の答えだったので、あーあるんだろうな、くらいの感触だったが、なんだか突然出た気がしたので少しびっくりして、慌ててみた。

前作、夕暮れ前にParisでふわっと別れた/離れたふたりのその後 - 9年後。
冒頭、息子を空港から送り出すJesseがいて、送り出した後に車に戻るとそこにもうCelineがいる。ふたりはなんと一緒になって双子のガキまで作っていた! という軽い一撃をくらったあと、家族でギリシャにバケーションに来たのだ、ということとか、さっきの息子はJesseの前妻との間の子であること、などなどがわかってくる。

まずヴィジュアルとして、Ethan Hawkeの95年から比べたら相当に錆びついて疲れきった風貌、Julie Delpyのむっちりおばさん化してしまった後ろ姿とかあって、これらに加えて結婚子持ちじゃもう、どう転んだって前2作にあった、いくのかいかんのかどっちだ、のはらはらどきどき(+きゅん)、は望みようもないよな、と誰もが思うはず。 この地点から - Sunsetを過ぎて闇が落ちてきた時間帯から、なにをどう転がそうというのか。

しかーし、この3人をなめてはいけない。 男女が出会ってすれちがう、事実としてはたったそれ「だけ」を長回しの会話「のみ」で既に2本作ってしまっている連中である。
今回も双子娘たちを預けて二人きりになったあとの長い散歩、そこからホテルに入って二人だけの夜がきて、そして。  ここでの会話のスリルとテンションときたらかつての数倍の勢いで高下するジェットコースターであり、映画の魔法であり驚異であり、瞳孔開きっぱなし拳握りっぱなしで見守ることしかできない。

「94年に最初に出会った時、わたしたちが今の風体だったらあなたはわたしに声をかけたかしら?」というCelineの挑発に始まって、ふたりの老いとこれからの生活(Jesseは息子のことを考えてシカゴへの移住を考えはじめている)のこと、そして何よりもいま、ふたりの間に愛はあるのか、一緒に暮らす意味や犠牲、などなどについて寸止めの組み手が、ひっかけあいつっかけあいの、生と死のダンスが繰り広げられていく。
ふたりとも、子供達とか生活の基盤は失いたくない、でも同時に、全てをふっきってちゃらにできるとしたら今しかない、ということもわかっている。
もともと根無し草だったふたりだ、こわいものなんか何もない。

前述のMOMAのトークで「なんであんなふうに会話を途切れなく続けていくことができるのか?」という問いに、「僕らいろんな本読んでるからネタはいくらでも出てくるんだ」とかおちゃらけて答えていたが、そういうもんなんだろう。 この"Midnight"の落としどころを見てしまうと、ありえない... と思うと同時に、あれしかない、ことにも気付いてびっくりする。 そういうマジック。

それってJesseとCelineがずっと一緒にいることのありえなさであると同時に、ふたりが一緒にいることの必然、でもあるの。 それは例えば、こないだの"Celeste & Jesse Forever"が舌足らずの言葉と身振りで描こうとした"Forever"に少しだけ近いなにか、でもある、はず。
"Before Midnight" - 日付が変わってしまう直前、いちにちの最後の崖っぷち、そこにふたりでいる、ということ -。

そして、これまでの2作がそうであったように、この3作目も我々にふたりの傍観者であることを許さない。 94年、"Reality Bites"の浮ついた空気を足元からクールダウンさせた"Before Sunrise"の頃から、彼らが互いに投げあった数百の問いは、そのまま我々自身への問いとして、手紙として、歌として、9年毎に我々を揺らしたり不安にしたりしてきた。 それが今回もまた、ほんとうにほんとうに切実な矢として、火掻き棒として目の前に飛んでくる。

彼らが息をつめて、その胸を改めて愛で満たしたその一瞬 - "Before Midnight" - を分かちあえたことを3人に感謝しよう。

2022年は、どうかなあ。

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